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”コロナ”なんかよりも”健康イデオロギー”の増殖のほうがよほど怖ろしいんです(第1回)

更新日:2023年4月14日

 新型コロナウイルスが,2019年12月に中華人民共和国湖北省武漢で最初に確認されてから3年3か月が経過した。

 

2020年1月30日には,世界保健機関(WHO)が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言,その後世界的な感染拡大の状況や重症度から「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」を,2009年の新型インフルエンザ以来11年ぶりにパンデミックとみなせると表明するに至る。

 【筆者注】パンデミック pandemic:語源はギリシア語のパン〘=すべて〙デミア〘=人々〙  

 

 そして現在,全世界での感染者の合計数は7億人に迫り,合計死亡者数もおよそ700万人を数えるまでとなったようだが,新型コロナウイルスのパンデミックは,感染流行した多くの国々の政治的・経済的状況にも大きな影響を与えることとなる。

 

感染拡大による経済危機はコロナショックと呼ばれたが,その本質は,まず対面コミュニケーションが制限されたこと,多くの国々で感染の抑制を目的とした渡航制限や外出制限等が実施され人的往来が著しく減少したこと,そして国内においても人流や物流が大幅に制限されたことに拠る。

 

人の移動の停滞によって生産活動や物流が滞り,物資の不足が生じたり,サプライチェーンの途絶も発生した。また,ロックダウン(都市封鎖)や自粛要請に伴って,レジャーサービスや飲食業等も営業停止を余儀なくされ,需要面からの経済停滞を惹起することとなったのである。


「日経ビジネス2021年5月11日」https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00081/031700161/

「IDWR2020年第21号」


 このように,世界はこの3年余にわたって新型コロナウイルスに翻弄され続けてきたわけだが,それでは一体このウイルスとは如何なるものであったのだろうか?

 コロナ発生以来,あちらこちらで俄ウイルス学が飛び交っていたけれど,ここではとくに筆者が興味を惹かれた面白知見にだけ少しふれておこう。


 生物がいる環境ならウイルスも存在する。その数や多様性は驚異的だ。~ウイルス粒子とは,たんぱく質でできた殻とその中におさまっている遺伝情報だ。遺伝情報を担う物質の種類により,DNAウイルス,RNAウイルスに分けられる。そのままでは自己複製できず,生物の細胞に寄生して増える。
(中略)
 生物の進化にかかわることも知られる。霊長類の系統で2500万年前以前に内在化したとされるレトロウイルスは,「シンシチン」と呼ばれるたんぱく質を作る遺伝性として使われている。シンシチンは胎児と母親をつないで胎児に栄養や酸素を供給する胎盤の膜をつくるときに欠かせない遺伝子である。(朝日新聞2020年4月6日「科学の扉:ウイルス共生の歴史」瀬川茂子記者) 
 ウイルスは意外にも 海洋に大量に存在すると言う。海水 100 ml 中にはおよそ 1 億~ 10 億のウイルス粒子が観察でき,海洋全域では数にして 約1030個のウイルス粒子が存在すると見積もられている。(https://cls.kuicr.kyotou.ac.jp/wp−content/uploads/2017/03/Mihara15Iden.pdf)

【筆者注:宇宙全体の星の数の推計は1022(10の22乗)個と言われているので,世界の海にいるウイルスの数はその10億倍にもなる】


 

 フランスの進化生物学者パトリック・フォルテール氏(パスツール研究所・パリ=サクレ大学名誉教授)は,ウイルスはたんぱく質の殻(カプシド)をつくる遺伝情報を持った生命体だとし,系統進化のなかで考慮すべきだと主張する。

 (「The Asahi Shinbun GLOBE」 2020 September No.233 07面 インタビュー) 


 ウイルスは細菌と違って,細胞に感染しないと増殖できない。つまり,ウイルスはたんぱく質の合成装置がないため,宿主の装置を使うことで増えていくしかない。ところが,最近になって続々発見されている巨大ウイルスの登場で,これまでの定義が覆され,ウイルスの起源と生命の進化をめぐって大きな謎が突きつけられたのである。

 仏地中海大(現エクス=マルセイユ大)と仏国立科学研究センターのグループは,2003年に発表した「ミミウイルス」(英語のmimicから名付けられた)に続いて,2013年にはミミウイルスの2倍の大きさのある「パンドラウイルス」,2014年にはシベリアの永久凍土からさらに大きい「ピソウイルス」を見つけた。

 これらの巨大ウイルスは,大きさだけでなく構造もより複雑で,たんぱく質の合成装置にかかわる酵素をもち,それを使うのもいる。ミミウイルスなどは,免疫システムのようなものまで備えているというのである。

(「The Asahi Shinbun GLOBE」 2020 September No.233 06面参照) 



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